詩  夜

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閑かな夜 何も見えない中しゃがみ込み ぬかるみに手を入れては 探し物をする 何を探しているのか もはや自分でも分からない それでも 手に触れる物はないかと ただ探し続ける ふと指先に鋭い痛みが走る 破片だ 壊れた何かの欠片 そこかしこにあった破片を集めると それが何なのか判らないまま 直していく バラバラになっていた破片は ひとつひとつ繋ぎ合わせ 元の形を取り戻していく それは器のようであり また瓶のようだ しかし いくら直したとしても もはや水を溜めておくことが出来ない 繋ぎ合わせた箇所から 水が漏れ出てしまう そしてまた ガラガラと音をたてて器は崩れて 底無しのぬかるみに沈んでいく ふと 顔を上げると 遠くに光が見える そこに行こうと足を動かすが ぬかるみは僕を逃がさない お前の場所はここなのだと お前の為べきはこれだけだと 明けることのない夜で 僕はまた探していく 僕は 僕は
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