4人が本棚に入れています
本棚に追加
「成仏、出来る当てがあるんですか?」
「勿論よ」
「なんで今まで成仏しなかったんですか?」
「一人じゃ出来ないことなの。でも今までは誰も協力してくれなくて。っていうか、皆逃げちゃって」
そうでした。
私は腰を抜かしたばっかりに、この幽霊に捕まっちゃったんだっけ。
「………それで、何をすればいいんですか?」
「協力してくれるの?やったー」
だって、成仏しないと、いつまでもこの部屋に居つくってことでしょ?
私の占い部屋が幽霊憑きだなんて、お客さんの足が遠のきかねない。
なけなしの貯金をはたいて契約したんだから、お客さんに来てもらわないと困る。
というわけで、私は『お姉さん成仏大作戦』に協力することにした。
お姉さんには心残りがある。それは妹のように可愛がっていた従妹のこと。
「今、いじめにあっているみたいでね」と溜息をついた。
いじめ、という単語に私はビクッとする。
お姉さんはそれに気づいたのか気づいていないのか
「真面目な子だから、自分を追い詰めちゃうんじゃないかって心配なの」
と続けた。
「だから、無理して学校に行く必要はないって。学校に居場所がないんだったら、他に作ればいいって。肩の力を抜いて、まずは生き延びて欲しいって、伝えたくて」
自分が生きている時なら、自分が居場所になってあげられる。でももうそれは出来ない。
そう語るお姉さんは切なげだ。
「だからせめて、気が楽になる言葉を伝えたくて」
俯く私の顔を覗き込んで聞く。
「それとも、綾香ちゃんはどうしても学校に行くべきだと思う?いじめられてても…」
「行かなくていいです!自分をいじめる誰かがいる教室になんか、行く必要ないです!」
思わず強くなった語気にハッとなるが、お姉さんは笑って言った。
「綾香ちゃんなら、そう言ってくれると思ったんだ」
最初のコメントを投稿しよう!