カードで未来は見通せない

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「それで、私は何をすればいいんですか?」 「私が従妹をおびき寄せるから、あの子を占って欲しいの。というか、占いという名目で、私のメッセージを伝えて欲しいの」  「おびき寄せることが出来るなら、自分で直接話せばいいのに」 「あの子、霊感ゼロなのよ」  霊感がなくても、おびき寄せられたりしちゃうんだ……。背筋に悪寒を感じながら、協力を請負った。 「あっ、従妹が近くまで来た。綾香ちゃんも早く準備して!」 えっもう?展開、早!  とりあえず心の準備をしていると、お姉さんは怪しげなポーズで部屋のドアに向かって 「唯菜(ゆいな)ちゃん、来ーい…唯菜ちゃん、来ーい…」 と呼びかけた。あまりに間の抜けたその姿に、さっき感じた悪寒をどうしてくれる、という気分だ。  そうして息を詰めて待つこと数十秒、エレベーターの扉が開く音がした。  スニーカーらしい足音が近づいてくる。 「あ、しまった」 「お姉さん、今度は何?」 「ここ個室だからドアが閉まってるけど、それだと高校生には入ってくるのにちょっと勇気がいるよね」 「わかった、開けてくる」  お姉さんに言われてドアを開けると、まさに目の前に制服姿の女の子が立っていた。 「え?ど、どうして、私がいるのわかったんですか?」 戸惑う顔も初々しく可愛いらしいその子に 「ええ、お客様が来る予感がしたから。どうぞ、入って」 適当なことを言って招き入れる。 「お邪魔しま…す…」 部屋に入ったその子が何か微妙な表情になったのに気づき、ドアを閉めて振り返る。 ……あ!あかん。  普通占い師の部屋と言えば、薄暗い中にろうそくか何かが立っていて、黒とか紫の布で覆われた机と、ビロードの小さいクッションの上に水晶玉。占い師本人も長い布を頭から被って、顔を半分隠してたり、つまり神秘性を演出している。  なのに私が招き入れた部屋ときたら!  今日はとりあえず部屋の様子を見るだけのつもりで来ただけだったので、神秘性なんて欠片もない。  煌々と蛍光灯が()き、部屋に元からあった書棚や机は、いかにも安物。  そして私はTシャツにジーンズ… 「あの、ここ、占いを見てもらえるんです…よね…?」  ああ、思い切り不審がられてる。  だが部屋の隅にいるお姉さんをチラっと見ると、指でOKサインを作り 「そのまま、いって!」と合図してきた。  腹をくくるしかない。 「勿論よ。さあ座って」  意識して低い声を出し、ベテランの占い師のつもりになって、着席を促した。
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