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「それでねえ、私の星座は山羊座なんだけど、山羊座って上半身は山羊、下半身は魚なの。何でか知ってる?」
「知りません……」
「やだ、占い師なのに知らないの?」
「私の専門はタロットですから……」
室温が、また少し下がったようだ。
今朝の天気予報で
「今日は今年一番の暑さになるでしょう」
と言っていたのを、遠い記憶のように感じる。
「そっかー。でね、ギリシャ神話によると、神々が宴会をしていたところに突然怪物が現れて、牧神パンがあまりにも慌てちゃって、上半身は山羊、下半身は魚っていう、中途半端な姿になっちゃったんだって。恐慌をきたして慌てることを、パニックっていうのは、この神様にちなんだんだよ」
「そうですか……」
「それにしても、私の姿を見て逃げなかったのは、あなたが初めてよ。他の人はみーんな、悲鳴をあげて、逃げてったの」
「……腰がぬけて、逃げられないんです!」
私は、おしゃべりな幽霊に向かって叫んだ。
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