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「ライチはね、面倒見の良い猫だったのよ。」
僕の背中を撫でながら、主様は言う。
「あんたの前に飼ってた犬……同じトイプードルだったんだけどね。その子ともすごく仲が良かったわ。でも……あの子は、好奇心旺盛すぎてね。道路に飛び出して、車に轢かれて死んでしまったの。まさか、リードが外れてしまうなんてね」
「そう、だったの……」
「だからきっと、もう二度と同じことが起きないように、貴方には厳しく教育してたんじゃないかって思うわ。……まあ、私には、貴方たちがどんな会話をしているかまではわからなかったんだけど。きっと、貴方に伝えたいことを伝えきれたと思ったから、安心して天国に旅立ったのね」
「……そう」
棺の中。
眠るライチの顔に、苦痛はない。それどころか、笑ってさえいるような顔をしている。まるで、良い夢でも見ているかのように。
「……だったらそう言いなよ、先輩」
僕は忘れない。
あの日、雨上がりに見た景色を。綺麗な世界を。あなたのことを。
「仕方ないから……長生き、したげるよ。感謝しなよね」
僕は今日も、世界に虹を探している。
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