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「だからいいって。別に一日くらい帰らなくったって心配するような親じゃないよ。説明するのにも困るじゃん。行きつけのジェラート屋さんの店員さんのところに泊まるとか言ったら、余計にややこしくなるし」
「……屁理屈」
「あはは。かもね」
なるべく真新しい着替えを渡そうとしたところ、空閑はそれを断った。
「いーよ。俺、家にいるときも大体半裸だし。雨で蒸し暑いしさ。……あ、守屋さんはやだった? 地肌で畳に寝られるの」
「シャワーを浴びた後だから別に気にならない。風邪を引かない自信があるなら、いいよ。明日は子猫を病院に連れて行くから、空閑君が熱出しても連れて行けないけどな」
「うん。俺が死にそうになってても猫ちゃん優先してよ」
なんて、軽口を叩いて空閑は寝そべった。
──『俺の──身体が目的なワケ?』
雨が降りしきる中、博臣には確かにそう聞こえた。
こうして話してみて、空閑が別け隔てなくフラットな性格であることを知ってから冗談だったと分かるが。
──初対面でそういうこと言うか。普通……。
からかわれたにしても、タチの悪い冗談だ。
博臣なんかが言ったら冗談にも昇華せずに失笑ものだが、空閑が言うと本気にする輩もいるかもしれない。
なだらかな筋肉のついた白い肌は、染み一つ見当たらない。
──芸能人……アイドルみたいだな。
尻尾と手足の先だけ白い子猫はむくりと起き、眠り始めた空閑の指をぺろぺろと舐め始めた。
まるで拾ってくれてありがとうとでも言っているみたいに。
博臣は半裸の空閑にタオルケットをかけてやり、自分の部屋へ上がった。
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