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ストロベリーケーキの幸福
雨は早朝には綺麗に上がっていた。
一階へと降りると、空閑はすでに起きていた。
タオルを重ねてつくった簡易的なベッドの上で、子猫はのそのそと活動を始めている。
黒毛で出足と尻尾の先が白い。
「あ、おはよ。俺の服、綺麗にしてくれてありがと」
「もう乾いてたのか」
「これもかけてくれてたんだ。別によかったのに」
と言いながらも、空閑はお礼を重ねる。
見た目にそぐわず言葉遣いは丁寧で、礼儀正しい。
少し、年上に対してフランクなところはあるけれど。
毎週月曜日は「Stellato」は定休日になっている。
博臣は念のため、拾った子猫を動物病院に連れて行こうと思っていた。
「守屋さん、めちゃくちゃ手際よかったよね。……俺だったら猫ちゃんダメになってたかも」
「昔飼ってたんだよ。母がよく野良猫をかわいそうって言って拾ってくるから。世話は慣れてる」
博臣がそう言うと、空閑は心なしか安堵の表情を浮かべた。
朝食はいらないと言うので、博臣も食べなかった。
ストックしていた水出しコーヒーを飲んだ後、車に迷い猫と空閑を乗せて動物病院へ向かった。
先住猫もよくお世話になった病院だ。
診断ではどこにも異常はないが、目やにが気になるとのことで抗生物質の目薬だけ処方してもらった。
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