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会計の金額を見て、空閑は驚いている。
「ご、五〇〇〇円……」
「ペットは保険が利かないからこんなもんだよ」
空閑は手持ちがないらしく、縋るような目で博臣の方を見た。
身長は相手のほうが高いので、見下げられている状態だ。
博臣は会計を済ませると、空閑にプラスチックのケージを預けた。
野良猫──診察を受けるために「クロ」と仮名をつけられた当人は、ようやく終わったか、というような顔で居眠りをし始めた。
車の中での空閑は、行きよりも口数が多かった。
子猫に大きな病気がなくてほっとしているところもあるのだろう。
「普通の病院みたいに名字と名前で呼ばれるの知らなかった。守屋クロって。というか、名前どうしよ。クロってそのまま過ぎる?」
「別にいいんじゃないか。前に飼ってた猫は、三毛猫っぽい模様だったからミケだった」
「ネーミングセンス」と呟きながら、空閑は吹き出していた。
ちなみに名前をつけたのは拾ってきた母親だ。
空閑はケージの屋根を撫でて、クロやミケよりもいい名前を、博臣に聞かせてくれる。
「手と足と尻尾の先が白いから、シロにするか?」
「やだよ。……この子、アメにする。雨の日に拾われたから」
安直なネーミングセンスに、博臣はつい笑いを堪えきれなかった。
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