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昨夜の豪雨と低気圧の影響で、昼間でも気温は二〇度を下回ると予報で言っていた。
子猫──アメは元気な様子だったので、車中に置いてきている。
「それで、アメのことなんだが今後どうする?」
「あ……俺のマンション、ペット禁止で」
もごもごと言い淀む空閑に、博臣は眉をひそめた。
「助けたい気持ちは分かるけど、飼えないと分かっていて拾うのは無責任だと思うな」
「そう……っすよね」
「だから、アメは俺が飼うけれど、それでいいか?」
「え!?」
空閑は驚愕した顔を上げた。
「心配しなくても母の手伝いはしていたし、要領は分かる」
「そっか……アメも、素人の俺より守屋さんに飼われるほうが幸せだよね」
「あのなぁ……」
はあ、と溜め息をつく空閑に、博臣は居心地悪く蟀谷をかいた。
何だか空閑とアメを引き離す悪役みたいだ。
「俺の家で飼うけど、それでお別れってことはないだろう。……時々、会いに来て様子を見に来ればいい」
「え? いいの?」
「さっきは厳しいことを言って悪かった。元々、アメを拾ったのは空閑くんだろう。だから、飼い主は君だ」
と、博臣は言った。瞳を潤ませた空閑は、テーブルに上の博臣の手を取った。
博臣よりも一回り大きいけれど、すらっとした薄い手のひらだ。
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