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空閑はアイスブルーの冷たそうな瞳を歪ませて、博臣に何度も礼を言った。
……────。
アメを迎えてから、博臣は本格的に寝床を整えてやった。
ほとんどは先住猫がいたときに使っていたもので事足りたので、子猫用の餌とミルクを買い溜めた。
連絡先を交換した空閑からは、毎日写真と動画を催促されている。
買い始めてから一週間、アメは少しずつ新しい住まいに慣れてきて、博臣が仕事でいないときは、寝床から出て徘徊しているようだ。
仕事から帰ってくると、黒い影がびゅーっと走り抜け、疲れた博臣を「おかえり。いい子にしてたよ」と健気に待ってましたというふりをしている。
人肌に温めたミルクを出してやると、ぴちゃぴちゃと辺りに跳ねさせながら飲んだ。
ミルクの周りに敷いた新聞紙は、びちゃびちゃだ。
飲めている量よりも溢したほうが多いのではないか。
博臣一人では、家族が出ていった一戸建ての広い家を持て余していたため、アメが来てくれてよかったかもしれない。
餌とミルクは出されたものをもりもり食べるが、まだ撫でさせてはもらえない。
顎の下を撫でようとすると、ぷいと顔を逸らし、狭い場所にだっと走って行ってしまう。
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