ストロベリーケーキの幸福

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追いかけようとしたところで、テーブルの上のスマホに通知がきた。空閑の名前が映っている。 「あっ、守屋さーん。アメどうしてる?」 「どうって。さっき送っただろ」 「いやー、足りないよ」 「それなら直接見に来ればいいじゃないか。夜でも別に……」 と言いかけて、博臣は口を噤んだ。 大人が高校生に夜出歩くよう唆すのはよろしくない。 お互い、しばしの沈黙の後、空閑のほうからがやがやと若い声が聞こえてきた。 「今、外にいる?」 「ううん。学校……あ」 「学校?」 今は午後の八時だ。博臣の怪訝な声に、空閑は答える。 「夜間に行ってるんだよね。今、休み時間」 「ああ、それで」 生活リズムが合わない理由が分かった。 博臣は朝昼は仕事で、空閑は夜に学校へ行っているから。 空閑は博臣も知っている地元の定時制高校の名前を出した。 平均よりも偏差値の高い高校で、夜間も明かりがついている建物だ。 ──何か、事情があるんだろうな。 博臣は踏み込まなかった。 拾った子猫に会いたいだろう青年のために、博臣は「空いてるなら朝でも来ていい」と言った。 素っ頓狂な声が返ってくる。 「へっ?」 「だって、夜間学校だと永遠にタイミングが合わないだろう。俺は店長だけど、昼出勤のときもあるから、その日なら別に」 「えっ!? 守屋さん店長だったの!?」 「そっちに驚くのか……」
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