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何の弁明か分からないが、空閑は「え、だって」としどろもどろに言う。
髪と同じ色の眉を下げて、叱られた犬のようにしゅんと尻尾を落とすのを想像して、博臣の口角は自然と上がった。
「見た目若そうだったから全然分からなかった」
と、空閑は言う。
今年三〇歳になる身だが、アルバイトの面接に来た子からは「大学生ですか?」と言われることがある。
声も顔も若いとよく言われるのだが、十も下に見られるのは複雑な気持ちだ。
「俺が想像してるよりももっと年上ってこと? 二〇中盤くらいかと……」
「はずれ」
「えー……どーしよ。守屋さん四〇とか五〇のおっさんだったら」
博臣は笑いながら「それはない」と答えた。
「今年で三〇だ」
「ええっ!? マジかぁ……見えないね」
「よく言われるよ。声と顔が幼いんだろうな。親は全然そんなことなかったらしいけれど」
「でも得じゃん。守屋さんよかったね」
「雑な褒め方だな」
お互いの笑い声が重なった。それから少しして、チャイムの音が博臣のスマホから響いた。
「あ、そろそろ授業始まる。じゃ、アメちゃんの可愛い画像送っといてね。俺のモチベに関わるから」
「モチベ……?」
「モチベーション! やる気ってこと。寝たら怒られるからさぁ」
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