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若者は扱いづらい。
過去に博臣が規則や髪型のことで注意したら、数日で辞めた者もいる。
「そこは本当にすみません! でも俺も進級かかってて……」
と言われれば、引き下がるしかない。
決して笑いたくはないが、博臣は疲れきった表情を無理矢理ポジティブに塗り替えた。
「……分かった。何とか調整するから。次から気を付けてね」
「はーい」
窘める台詞に、武井はふて腐れたような返事を寄越した。
──そうしたいのはこっちだよ。
喉から出そうになった悪態は、いつも外にでることはなく、消化不良で胃底をもたれさせる。
当てつけみたいにならないように、少し時間が経ってから「シフトの調整をするからレジはよろしくね」と優しく武井に声をかける。
最近の子は繊細だ。こちらがいろいろと気を遣わないと、ハラスメントだのうざいだの一言を残して消える。
代わろうとしたところ、やたら恰幅のいい男が入店してきた。
「いらっしゃいませ」
ジャージ姿の男は、ショーケースの中のフレーバーを物色するために、目深に被ったフードを少し上げた。
隙間から見えた髪は青みがかった銀色で、両耳にはリングや石のピアスがいくつもついている。
人を見かけで判断するのはよろしくないが、博臣は緊張した面持ちでその男を見つめ返した。
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