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「アメ、元気にしてるぞ。ほら」
言いながら、空閑に自分のスマホを渡した。
家にペット用のカメラを置いてあるので、二十四時間アメの様子を見ることができる。
「わー本当だ! アメ、テーブルの上に乗ってるよ!」
「成猫になったらどこにでも乗るぞ。障子の縁に掴まることもあるしな」
「へぇー。守屋さん家、広いからアメも楽しいだろうね」
「家中傷だらけになって大変だけどな」
両親が新しい家に引っ越す際、今の家を売り渡すか検討したのだが、先住猫のせいで傷だらけで譲渡しても二束三文にしかならなかったので、博臣が相続した。
リフォームをしても辺鄙な場所なので、若者の買い手が現れないだろうという理由もある。
自宅へ到着すると、空閑は慣れた要領で床の間を目指した。
「アメー!!」
アメは突然現れた空閑を警戒し、するりと部屋の隅に逃げてしまう。
空閑の嘆息する声が聞こえた。
「俺、アメに嫌われてんのかなぁ……もしかして、忘れてる?」
「家に来てまだ二週間も経ってないからな。そんなに不満なら見に来ればいいだろ」
「でも、守屋さん仕事してるし」
博臣がそう言うのを、空閑はお世辞か方弁とでも思っているらしいと、今気付いた。
意外にも人の事情を気にする性格なのだ。
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