561人が本棚に入れています
本棚に追加
博臣は立ち上がり、タンスの奥から実家のスペアキーを手にした。
「俺に遠慮してるんだろう? いないときでもいつでもアメを見に来ていいぞ」
「え? 俺に? というか守屋さん。こんな格好の高校生に鍵渡しちゃっていいの? 物盗られるかもよ?」
「空閑くんはそんなことしないだろ。アメを拾うくらいなんだから」
「バレたか。根がめちゃくちゃ真面目って」
空閑はあははと笑った。
ケージから出たがらないアメを二人で見守りつつ、夕食は出前で丼物をとった。
──こういうのって何ていうんだろうな……猫仲間……いや、友達?
関係を表す適切な言葉が思い浮かばない。
空閑は高校生だから一〇は離れているだろう。
同性とはいえど、実家の鍵を渡していつでも来いなんて、高校生を誑かしているような気もする。
かなりまずい発言だったかもしれない。
もし空閑の両親に知られれば、決していい顔をされないだろう。
やはり鍵を返してもらうべきか……空閑のポケットを見つめていると、ふいに視線が合った。博臣は動揺する。
「守屋さんってさぁ、俺に聞きたいこととかないの?」
「え、あ……」
思考を読まれた気がして、博臣はすぐに答えることができなかった。
最初のコメントを投稿しよう!