ストロベリーケーキの幸福

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博臣は立ち上がり、タンスの奥から実家のスペアキーを手にした。 「俺に遠慮してるんだろう? いないときでもいつでもアメを見に来ていいぞ」 「え? 俺に? というか守屋さん。こんな格好の高校生に鍵渡しちゃっていいの? 物盗られるかもよ?」 「空閑くんはそんなことしないだろ。アメを拾うくらいなんだから」 「バレたか。根がめちゃくちゃ真面目って」 空閑はあははと笑った。 ケージから出たがらないアメを二人で見守りつつ、夕食は出前で丼物をとった。 ──こういうのって何ていうんだろうな……猫仲間……いや、友達? 関係を表す適切な言葉が思い浮かばない。 空閑は高校生だから一〇は離れているだろう。 同性とはいえど、実家の鍵を渡していつでも来いなんて、高校生を誑かしているような気もする。 かなりまずい発言だったかもしれない。 もし空閑の両親に知られれば、決していい顔をされないだろう。 やはり鍵を返してもらうべきか……空閑のポケットを見つめていると、ふいに視線が合った。博臣は動揺する。 「守屋さんってさぁ、俺に聞きたいこととかないの?」 「え、あ……」 思考を読まれた気がして、博臣はすぐに答えることができなかった。
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