ストロベリーケーキの幸福

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冷たい瞳から目を逸らせずにいたとき、ふいに空閑が笑った。 感情の読めないような、無味な表情だった。博臣が固まったままでいると、謎多き青年は昔を懐かしむようにぽつぽつと話し始めた。 「俺さ、アイドルだったんだよね」 「アイドル……」 通りで、と博臣は納得した。 空閑の容姿は一般人と並べて見て、オーラを纏っているといか、どこか抜きん出ているところがある。 先程の呟きと同じトーンで、空閑は淡々と言った。 「だったってことは、今は違うのか?」 「まあね。俺がメンバー殴って解散になった」 空閑は悪役らしく、にいっと口角を上げた。 黒歴史というよりもしてやったみたいな言い方に、博臣は何と反応するのが正解なのか分からなかった。 それでも一つだけ、空閑の本心が垣間見えた気がする。 ──多分、誰かに聞いてもらいたかったんだろうな。他言しないような、誰かに。 それが、アイドルとは無関心そうな博臣に向けられたのだろう。 「空閑くんが、本当に殴ったって? 信じられない」 「え、そう? ネットでは裏で女殴ってそうとか、いつかやると思ってたとか、めちゃくちゃ書かれてたよ?」 「めちゃくちゃな中傷だな」 「だよね。訴えたら金取れるかな?」
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