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今のは冗談だと博臣自身理解したが、目の前の男と同じようには笑えなかった。
「何か理由があったんだろ。喧嘩をする理由が」
「単なる行き違いだよ。まあ、先に手を出したほうが悪いよね。他のメンバーも全員見てたし。というか、どっちにしても俺のせいにされてたんじゃないかな。最年少でちょっとハブられてたし」
空閑の口ぶりからして過去のことを後悔している様子は、全くなかった。
地元の高校まで進んで、大学から仕送り付きの一人暮らしを始めた博臣にとって、空閑は違う次元を生きている存在のようだった。
アイドルだったということは、空閑やグループを応援するファンもたくさんいたのだろう。
裏切られた痛みは、きっと博臣には想像できない。
「実はこれ言ったの、親以外に博臣さんが初めてなんだよね。友達……っていうか友達全然いないけど、話せるやついなかったし」
「どうして俺にそんな大切な話を?」
「……さあ? 口が固そうだから?」
「本当に君は。何だかふわふわしてるな」
「そう? じゃあ本性だしたら守屋さん引いちゃうかな」
本性という言葉がやけに生々しく、博臣の心臓は跳ねた。
びっくりしている顔に、空閑は「じょーだん!」と緩い雰囲気の台詞を吐いた。
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