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「俺、責任取ってここで働く」
「え? 何言ってるんだ……別に、君のせいなんて言ってないだろ」
「それは本人に聞かないと分かんねぇけど。というか、嫌々じゃないよ? むしろ守屋さんと一緒にいられて一石二鳥みたいな?」
「はあ……?」
「お願いします、店長。役に立たないと思ったらクビにしていいよ」
ショーケースの前で頭を下げられては、いつまでもいいえと断って、他のお客様を妨害するわけにはいかない。
かといって、手取り足取り博臣が教える余裕もないのが現状だ。
新しいアルバイトの募集を気長に待つよりも、空閑に甘えたほうが楽だと博臣自身も思っている。
背に腹は代えられない。
「……分かった。とりあえず一ヶ月が試用期間。ちゃんと時給は出すから」
……────。
空閑の働きは博臣の想像を遥かに上回った。
あまり比べるのはよろしくないが、空閑は何でも覚えが早く、すぐに離れた武井の穴を埋めてくれた。
気が利くし先輩達のフォローも早い。
外見はちょっと物騒だが、人懐っこく、男女別け隔てなく皆から可愛がられている。
周囲に溶け込み、空閑がいない日は皆が空閑の話をする。
それを聞いていると、何故か胸が騒ぐような何とも言い難い気持ちになった。
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