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空閑は流れる風景を見つめながら、ぽつぽつと昔のことを語った。
アイドルグループの「推し」に憧れて、歌やダンスをコピーした動画を上げるようになったこと。
それが運よく掘り出され、芸能事務所からスカウトが来たらしい。
その頃、空閑はちょうど中学三年で進路を決めなければいけない時期で、両親と毎日言い争っていたそうだ。
「俺、あのときのことは今でも納得してない。通信か活動やりながら芸能関係の高校行くって言ったら大反対されて。もっと頭のいい高校受けろだって」
「大人は現実的だからな」
そう言いたくなるのも分かる。
少額ではない仕送りと学費を工面してくれた自身の親の苦労を、博臣は知っている。
夢を追いたい空閑の気持ちを尊重したい気持ちと、できれば失敗する確率が少ないレールを歩んでほしいという親心は相容れないものだったのだ。
「親説得して通信にして。……でも、結局無理だった。他のメンバーはオーディション組で、俺はスカウト。……まあ、はぶられるよな、普通」
結成したメンバーの足並みはバラバラ。
さらに空閑をセンターにして売り出すという事務所の方針で、空閑は多方面から嫉妬や中傷をもらうようになった。
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