ブルーキュラソーライチの決意

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特に、オーディション組は合宿や合否の様子を、ドキュメンタリードラマのように配信していたので、突然センターに据えられた空閑は、ファンの立場からすれば容易に受け入れられるものではなかった。 「ファンからもメンバーからも、枕なんじゃないかって指差されたよ。この先俺がどんなに頑張って成果出しても、結局その評価は変わんないんだって思うと絶望した。じゃあソロでやりたいって言ったら、作曲も演技もできないでしょ? って」 家族には高校は通信で卒業するといった手前、芸能活動をやめることはできなかった。 他のメンバーを殴って傷害事件を起こした後、空閑は通信をやめて定時制の学校へ入り直した。 「つまんねぇ人生だよ。夢なんか見なきゃよかった。……でも、俺の味方はいないわけじゃなかった。俺のこと好きで応援してくれる子もいて、それだけで頑張ってこれたんだよね。……守屋さんも」 「えっ、俺か?」 うん、と大きく頷いて、運転する守屋の顔を見据える。 キラキラした若い十代の視線が、博臣には眩しすぎた。 「学校、夜しかなくて昼間家に居づらくて、でも、この辺長時間座れるところとかないからさ。田舎だし。アイドルしてたときは上京して一人暮らしで、最近戻ってきたから、こんな店できてるなんて知らなかった」
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