ソルティバニラの求愛

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都会生まれ都会育ちの目良は毒舌だが、意外にもここへ来ることを楽しみにしていたらしい。 「君みたいな子、こんな田舎は嫌なんじゃないか」 「いや、俺インドアなんで気にならないです。ネットさえあれば。夜、虫の声は気になるけど、ほとんどヘッドフォンしてますし」 「へぇ。身体つきがいいから体育会系だと思ってた」 「まあ、たまの週末、山登りとかはしますかね」 博臣は「全然インドアでもないな」と突っ込んだ。 あまり同年代が身近におらず、未成年のアルバイト達へ振る話題にはいつも困っていた。 気兼ねなくプライベートについて話せるのがつい楽しくて、会話が続く。 「守屋さんは休日とか何してるんですか?」 「俺は……猫の相手かな」 「猫……? 猫飼ってるんですか? いいな、会社が借りてる部屋、ペット禁止だから。今度見に行っていいですか。猫ちゃんに手土産持っていくんで」 「俺にはないのか」 互いに笑いを溢した途端、ドンドンと大きな音が響き、二人して部屋の入り口のほうを見た。 事務所へ続く開きっぱなしのドアの向こうには、空閑が高い背をもたれて立っていた。 「店長。ジェラートの補充終わったので。確認してください」
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