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鋭く刺すような視線に、博臣は一瞬たじろいだが、すぐに行くと返事をした。
後任の目良は空閑に苦手意識を持っているようで、横にいる博臣だけに聞こえるような音量で、「こわ」と呟いた。
「俺、空閑くんとやっていけますかね……」
「見た目はああだけど、よく働くいい子だよ。目良くん、お疲れ」
「はい。お疲れさまです」
退室する目良とは逆の方向……売り場のほうへ向かう。
夜のシフトはこの三人で回すことが多く、普通の高校生よりも仕事に出てくれる空閑にいつも助けられている。
博臣が補充されたジェラートを確認する間、空閑は気味が悪いくらいに口を閉ざしていた。
博臣はあえて気にしないふりをする。
「ありがとう。空閑くん。助かるよ。もう遅いから上がって……」
「何で、どっか行っちゃうこと黙ってたの?」
「え?」
何の話、と心当たりがないことを言われた気がしたが、異動の話だと勘づいた。
博臣は嘘偽りなく話す。
「何人か候補がいたんだよ。調整して決定になるまでは話すなっていう決まりだった」
「俺は誰にも話さないよ?」
「そういう問題ではなくて……。とにかく親しい間柄でもダメなんだ」
空閑は全く納得のいっていない顔で、「ふぅん」と会話を終わらせた。
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