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「く、くるし……なんで、こんな早く……」
「そりゃ呼ばれたら来るでしょ。俺、あんたのこと好きなんだから」
別れ際の抱擁が軽いハグだったと思えるほど、力強い。
まるでもう逃さないと言われているようだった。
博臣は空閑の真っ直ぐな好意を逸らすように、「アメが」と呟いた。
「アメが、連絡したんだ」
神妙な顔つきでそれを聞いていた空閑は、ぷっと吹き出しそのまま腹を抱えた。
堪えきれない笑いが、会話の端々に混ざる。
「……守屋さんシャイなのは、知ってるけど……っ。もっと上手い言い訳とかないの……間違って押したとかのほうが、俺信じるよ」
「言い訳じゃなくて、本当に目を離した隙に……!」
「何そのスーパーキャット。動画撮ってたらめちゃくちゃバズってそう」
博臣を困らせて空閑を爆笑させた愛猫は、夜行性なのに高いところで眠っている。
「というか空閑くん、何でこんな早く」
「え? 卒業して引っ越したから」
「い、いつ!? 知らなかった。何でさっき教えてくれなかったんだ」
「守屋さんだって教えてくれなかっただろ。仕返し」
べー、と鈍く光る舌先を、博臣に見せつけた。
そして、博臣がいなくなってからの、空閑の話を聞かされた。
定時制の高校を卒業し、それと並行で行っていた動画活動に本腰を入れることになったこと。
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