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青年の姿を見てはっとする。服は脱水にかけており、纏っているのは下着と首にかけたタオルだけだった。
着替えを用意することを失念していた博臣は、青年の体格に合いそうな服を探しに行こうとする。
「すげぇ! 綺麗になってる……なあ、こいつ、生きてるよな?」
沈んでいた青年の声が、かごの中で眠っている子猫を見た途端に明るくなった。
嬉しさと安堵でいっぱいになった様子に、博臣も笑みを溢す。
「生きてるよ。自分でミルクも飲めてたし、元気だった」
「そっか……よかった。死んじゃったらどうしようかと思った」
子猫の首のふわっと広がった毛を、指の背で撫でている。
外見に似つかないような、献身的な姿だった。
「君は、大学生くらいか? 実家に住んでるなら、家に連絡を入れたほうがいいんじゃないか」
「いいよ。あんな家」
素っ気ない言葉で返されて、博臣は面食らった。
ついでに「君」と呼ばれたことを訂正するように名乗った。
「俺、空閑春人。お兄さんの名前は?」
「守屋博臣。空閑君は……もしかして、高校生か?」
「まあ、うーん。そんな感じだね」
「未成年じゃないか。なおさら連絡を入れたほうが……」
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