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空閑の動きが激しくなり、もう何も考えられなくなる。
空閑に甘えるような声で強請られるがまま、博臣はその願いを叶えてやった。
……────。
「だーかーら! ごめんって!」
騒々しい声が聞こえてきて、博臣は微睡みから意識を浮上させた。
シェードの隙間から柔らかな木漏れ日が、シーツにぽつぽつと落ちている。昼過ぎくらいだろうか。
完全に寝過ごした……と、休日の午前を無駄にしたことを後悔するのと同時に、昨日の光景が脳裏に浮かび、博臣はシーツに顔を押しつけた。
寝室とリビングを分ける引き戸の向こうでは、何やら空閑が大声で謝り倒している。
砕けた口調から、目上の人ではなさそうだが、その人はどうやらいつまでも空閑のことを許す気はないらしい。
無茶な姿勢ばかり取らされて、腰やら太腿やらあちこちの筋肉が痛い。
足を前に踏み出す度に、鈍痛の発する箇所を擦りながら、博臣は戸を引いた。
「……あ」
一人と一匹は、同時に博臣のほうへと顔を向けた。
「どうしたんだ? アメ」
「え、そっち!?」
空閑は普段通りだったので、珍しく黒い毛を逆立てているアメのほうに意識がついいってしまった。
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