573人が本棚に入れています
本棚に追加
博臣の姿を見つけると、アメは安心したようでフローリングの床の上でお腹を見せた。
部屋の中で日光の落ちる場所が、アメのお気に入りだ。
「博臣さん冷たい」
「……っ。お前なぁ……」
背後から羽交い締めするような格好で抱き締められ、体重のかかった足腰は悲鳴を上げた。
何だか猫がもう一匹増えたみたいだ。
「アメ。元気でよかった。博臣さんが飼ってくれてるから心配してなかったけど」
「ほとんど押しつけられたような形だったけどな」
皮肉っぽく言うと、もう一人の飼い主は「ごめん……」と意気消沈した様子で呟いた。
体格の大きい男が肩を下げている様に、博臣はおかしくて笑ってしまう。
「これからは会いに行くよ、毎日。アメにも博臣さんにも。……なーんか、博臣さん取られてアメが怒ってるみたいだし」
「アメが?」
そうか? と博臣は不思議に思った。
確かにさっきは空閑のことを警戒していたようだが、もうすっかり野生をなくしてリラックスしている。
陽だまりでゴロゴロ喉を鳴らして、今にも眠りそうなアメを二人並んで見つめる。
隙だらけの空閑の顔を引き寄せ、唇を深く重ねたのだった。
fin.
最初のコメントを投稿しよう!