ミントチョコレートの秘密

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ミントチョコレートの秘密

例年より早い梅雨明け。 気温が三〇度を超える日が続き、守屋(もりや)博臣(ひろおみ)もここ数日は若いアルバイトに混ざってレジに立っていた。 午後六時、片田舎に最近出店したジェラート屋「Stellato(ステラート)」は、九割が制服姿の学生達で埋め尽くされている。 博臣が新店舗である、満天町の店舗を任されて一年と少しが経つ。 立地は駅から程なく、近辺に中高があるおかげで毎月の売り上げはノルマを達成している。 初めて管理職を任されてからというもの、経営はまあ順調だった。 「すんません。店長」 「どうしたの?」 お客が少しはけた頃を見計らって、アルバイトとして入っている武井(たけい)が博臣を呼び止めた。 手入れされた細い眉が申し訳なさそうに下がっているのを見て、博臣の胃は痛くなる。 「前の数学、赤点で引っかかっちゃって……一週間、ここのシフト休ませてくれませんか?」 「い、一週間!?」 博臣はつい声を張り上げてしまった。 ひとまず武井を裏へと連れて行き、声のボリュームを下げて問いただした。 武井は先月もテスト期間という理由で、二週間ほどシフトを空けたのに。 「急なシフト変更は困るよ……。先月から言ってくれないと」 先月に言われても人手不足の中、立ち上げ時から雇った武井が抜けるのは痛手だが。
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