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乾杯後、魔界産の赤ワインをひとくち。
「なにこれ、うまい!」
ハルカは目を丸くした。これは並みのワインではない。
繰り返しになるが、ハルカは大の酒好きである。
安くても高くても、酒なら何でも好きな方の酒好きである。
とくに奢りで飲む酒は大好きだが、自分の金で飲むときは、コストパフォーマンスを重視するので、「飲み放題」か「宅飲み」と決めている。
ワインも同様で、オシャレなバーやレストランのグラスワインの1杯や2杯では到底満足できない。
ゆえに、都会に住んでいたころは、会員制ワインバーの『飲み放題メンバー』となり、仲良くなった美人ソムリエールがすすめてくれるワインを、産地、シャトー、品種を問わず、月額5千円の週1ペースでガブガブ、ガブガブ。ドリンクバーのように飲んでいた。
そうしてワインの良し悪しについて、なんとな~く、わかるつもりになっていたハルカだったが、シルヴィーが持参した魔界産の赤ワインをひとくち飲んだ瞬間、その美味さに衝撃を覚える。
なんだこれは! うまいったら、ありゃしない。
まさに別格。色、香り、後味、どこをとっても、ハルカ史上最高の味わいだった。
極上ワインに、雄叫びをあげる。
「生きていて良かったああああ~~~」
そこからは、もう止まらない。
「どうぞ、全部飲んでください」
「ありがとう。では、遠慮なくっ!」
シルヴィーの言葉に甘えに甘え、ワインボトルを片手に手酌でグビグビ~
ハルカ的には味わいながらも、生ビールをジョッキで飲むようにグビグビ~
と、そんな飲み方をしていれば、瓶底はあっという間にみえてしまう。
「もう空っぽかあ~」
ボトルを逆さにして、どんなに一生懸命振っても、一滴たりとも落ちてこない。
ボトルではなく、できれば樽ごと欲しい――そう思わせるワインであった。
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