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お引越し
日の出国生まれの、日の出国育ち。
外資系企業のキャリアウーマンとしてバリバリ働いていた青山ハルカは、昨年の冬、都会での会社勤めに別れを告げ、かねてより憧れていた山奥でのスローライフを決意した。
移住先は、都心から数百キロ離れた中核都市・異界県空想市の奥地に開拓されたとあるモデル地区。
ハルカが、この地区を選んだ理由はいくつかある。
昨年、母方の祖母・大江タツ子が天寿をまっとうし、享年99歳でこの世を去った。
命の火が消えるその日。枕元でタツ子と交わした言葉がある。
「わたしが死んだら……この家は、ハルカにあげるよ。気に入ったら……もらっておくれ。ここは、いいところさ。お試しでいいから住んでみたらいいさ……きっと気に入るさねえ」
「もうとっくに気に入っているよ。嬉しいな。こんな素敵な村で暮らせたら最高だよ。明日からでも引っ越してこようかな。だから、婆ちゃんも……もうちょっと、がんばりなって……また、桜をみようよ。ねえ、婆ちゃん」
遺言どおり、ド田舎村にある古民家はハルカが相続することになり、まずはスローライフにぴったりな環境と住居を手にいれたわけだが、この地を移住先に選んだ最大の理由は、また別にある。
この地区が、国策である【異種族との楽しい共存・イミテリアル構想】における特定異種族・共存モデル地区のひとつであったこと。
移住者には特典として『オール税金免除』が付与されることが、何よりも決め手だった。
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