お隣さん

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いつかはきっと、『お隣さん』から『新婚さん』へ。 新たな夢を胸に抱きながらジーンとしていたシルヴィーだったが、ここで正座をしている脚もまた、激しくジーンとしてきたのだった。 両脚の膝をそろえて畳み込む日の出国スタイルの座法は、 「うぐぅぅ……」 シルヴィーの幸せな妄想を掻き消す勢いで、下半身に痺れという耐え難い苦痛を与えてくる。 愛しいハルカを目の前にして、理性と節度を保ち、欲望を抑え込むには、これ以上ない座法であるが、ツラい、とってもツラい。 そこに「おまたせ~」と、逆さにしたワイングラスを片手にぶら下げ、ツマミを盛りつけた皿を盆にのせたハルカが、縁側にやってきた。 「あれ、シルヴィー、魔界育ちなのに、正座なんてよくできるね。脚イタイでしょう。無理しないで縁側に腰掛けて。わたしもそうするからさ」 家主の許しがでたことで、「御言葉に甘えて」と腰をあげようとしたシルヴィーは、さらなる激しい痺れに襲われ悶絶。 「グッぬうううぅ」 情けない呻き声をあげたのち、踏ん張り切れずに顔から突っ伏した。 ゲラゲラと笑い転げるハルカに腕を支えられ、ヨタヨタと縁側に腰掛ける。 「ご迷惑を……」 「いいよ。婆ちゃんが足腰弱ってからは、いつもこうやって縁側まで連れてきてあげていたから。懐かしいな。村役場で訊いたんだけど、異種族って青年期が長いんだってね。シルヴィーも若そうに見えるけど、やっぱり衰えは足腰からくるからねえ。無理しないで」 「衰え……足腰……」 ハルカに年寄り扱いされ、すっかり落ち込むシルヴィーだった。
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