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きっかい村の村民たちは、村で唯一の人族だったタツ子の孫を大歓迎してくれた。
「ようこそ、きっかい村へ!」
古民家にハルカが到着するやいなや、
「それ、こっちー」
「これ、こっちー」
「あとは、これー」
「終わりましたー」
きっかい村役場からやってきた若手職員たちの人外の速さと怪力による、じつに効率的な引っ越し作業がはじまった。
車1台分の荷物はあっという間に荷解きされ、すぐに使えるようにと所定の位置へ。
古民家の住人となるハルカといえば、手を出すことを早々にあきらめた。
なぜなら、古民家特有の狭く、傾斜のきつい急階段を使うことなく、空を飛んで2階の窓から楽々とダンボール箱を運び入れる有翼人職員。
また、ハルカの不精により、多くのダンボールには「日用品」「衣類」「食器」といった品目が未記入だったが、透視能力のある魔族職員によって、
「あっ、これは台所用品だから箱をあけて整理して。そっちはコタツ布団だからそのまま押し入れに運んでおいて。魔法でラベリングしておくといい。冬場になったら自動で前側に出てくる。ああ、それは書籍関連だから外から2階に運んで、本棚にジャンル別に並べておくといい」
開封する手間なく、どんどん仕分けされていく。
衣類にしても日用品にしても、春夏に必要なものだけが、きっちりと収納されていく様子は、まるでプレミアムサービス付きの「おまかせ引っ越しパック」のようだった。
ハルカが運び込んだ荷物といえば、下着類が入った衣装ケースのみ。あとは祖母タツ子の親友だったエルフ族のマーサおばさんが持ってきてくれた引っ越し蕎麦を茹でながら楽しくおしゃべりをして、
「皆さん、本当にありがとうございました。おつかれさまです」
作業を終えた平均年齢300歳の若手職員たちと、ワイワイにぎやかに蕎麦を食べた。
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