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◎時空の狭間◎
ああ、久しぶりによく寝た…
時間を気にせず寝てられるって幸せだなぁ。
「んん…」
ぼんやり瞼を開けたら、
「祖父ちゃん!?」
地べたで仰向けに寝ている俺の頭上に、白ワンピースの白ヒゲ爺が。
「誰がおぬしの祖父ちゃんか!」
慌てて飛び起き周囲を見回す。
何もない、真っ白な空間…?
「ワシは何を隠そう、“神様”じゃぞ」
そうだ、俺ついさっき、ビルの屋上から飛び降りて…
「じゃやっぱり八年前逝った祖父ちゃんじゃないか! ここあの世なんだろ?」
「いいや、ここは時空の狭間じゃ。ワシの名はクロノス、時を司る神じゃぞ」
しっかり日本人の風貌だが、そんな横文字の名前なのか。
「おぬしに人生をやり直させてやろうと思っての」
……。
「あ、これアニメで見た。異世界転生ってやつだ!」
「いや、おぬしの人生をもう一度はじめからじゃから、ただの現実世界転生じゃな」
「…それならいいよ、戻りたくない」
「そう言わずとも。今の記憶を持ったまま転生させてやるでな。あのブラック会社に入社せねばよいのじゃ」
ん─…
「おぬしなかなか優秀だったんじゃろ? たまたま運が悪かっただけで」
「そうだよ! そうなんだ!」
運が悪かっただけだ!
「次の就職活動は慎重にな」
神を名乗る祖父似の老人がすっと手を上げたら、後方から大きな光の輪が俺に迫り来た。俺はそれに取り込まれ、遥か時空を飛び越えたのだった。
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