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「……憧れの兵士からもらった剣も、最後に下の兄からもらったぬいぐるみも、ネロの次にできた友だちも……いつも上の兄に奪われて、壊された」
グス、と彼の鼻が鳴る。
「奪われないように、壊されないようにって大事に大事に隠してるのに、上の兄は絶対に見つけて、笑いながら奪っていくんだ……!」
だから、と彼は涙声で言った。
「……だから、あの人だけは……この想いだけは、奪われたくなくて、壊されたくなかったから……!」
彼はぎゅうっと手を握り締め、白い指が腕に食い込む。
すごく痛そうなのに、彼の手から力が抜ける様子はない。
「上の兄に気づかれる前に、あの人に『嫌いだ』って言って、言い続けて……あの人に、やっと嫌われたんだ。それであの人から離れて、上の兄からも離れて……これでようやく、大切なものを作れるって、今度こそ手放さないで大切にできるって、思ったのに……!」
色々な感情がぐちゃぐちゃに混ざった声で、彼は叫ぶように吐き出していく。
「でも、でもっ、上の兄に捕まって、無理やり連れてこられて……め、め、目の前、で、あの人は、胸に、け、剣を――!」
そしてそこまで言って彼は言葉を詰まらせ、苦しそうに咳き込んだ。
「だいじょうぶ?」
「……ごめんなさい、ごめんなさい……!!」
震えている背中をさすりながらそう声をかけると、彼は乞うように、懺悔するように、涙で濡れた声で謝罪を叫ぶ。
「ぼくが好きになったせいで、ぼくがッ、ぼくの、せいで……!!」
再び声を詰まらせ、咳き込み、とうとう彼は悲鳴のような叫び声をあげて泣き出した。
苦しそうで、痛そうで、ネロは思わず彼をそっと抱きしめた。
「……ネロ、ネロ……!!」
「うん、ネロはネロだよ。ここにいる、きみの友だちだよ」
ポンポンと彼の背中をなで、そう声をかける。
少しずつ彼の緊張がほぐれていくのが腕に伝わってくる。
「……ごめんね、ネロ。ありがとうね……」
「うん、どういたしまして」
そう返せば、彼は少しだけ笑顔を見せてくれた。
天井から差し込む光に照らされたそれは、ネロにはとても眩しく見えた。
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