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「ところで、リコ」
クロはリコの顔を真っ直ぐに見上げた。
「どうして泣いているんだい」
リコの瞳が揺れた。先ほどまで潤んでいた瞳はあっという間に涙を湛えた。
「クロは自分の毛の色、好き?」
クロは前足を見つめた。真っ黒な毛がクロの体中を覆っている。
「好きではない」
リコの瞳から涙がこぼれ落ちて、再び膝の上を濡らした。クロはリコの様子を気にすることなく続けた。
「母も兄弟たちも皆、黒ではなかった。兄弟たちの中で自分だけが浮いていた。気まずくなって彼らの元を離れた。人間たちも黒猫は不吉だと疎んでいる。黒以外の色を持って生まれていたら、今頃孤独ではなかったかもしれない」
「やっぱり」
リコの震える声に、クロはリコを見上げた。リコは自分の黒髪を強く握りしめていた。
「黒は不吉なんだ。濁った汚い色なんだ」
とめどなく流れる涙を、クロは黙って見つめた。
長い間そうしていた。
クロの頭に空の涙が一滴落ちた。空もリコと一緒に悲しんでいるようだった。
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