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「黒猫は、特別な力を持っているんだ」
クロが沈黙を破る。大きくなってきた雨の音に負けないように少し声を張っていた。
「リコと話ができるのはそのおかげ」
リコは妬ましそうにクロを見た。
「私には何の力もないのに」
「そうかもね」
クロは閉じていた反対の目も開けた。黄色い二つの瞳がリコを見つめる。
「でも人間と話したのはリコが初めてさ。リコが黒い髪を隠して泣いていたから声をかけた。金髪や茶髪だったら、ただの猫のふりをして無視していたよ」
リコは目をぱちくりとさせてクロを見つめ返した。黒髪を理由に話しかけてくれたことを、どう受け止めればいいのか分からなかった。
「黒色に孤独を感じている者同士、仲良くしないか」
「友だちになってくれるってこと?」
「そうさ」
クロが先ほどのように前足を差し出した。リコは肉球をぷにぷにと押して楽しんだ。クロは何も言わなかった。
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