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「クロ、私の家に来る?」
リコが唐突に聞いた。
「もちろん」
クロの返事は簡潔だった。
リコは立ち上がり、家に向かって歩き出した。その横をクロがちょこちょこと歩いた。
「黒猫でよかったよ。リコに人間の言葉で話しかけることができた」
クロはリコの足に纏わりつくように体を寄せた。
「黒髪でよかったって、初めて思った。クロに話しかけてもらえたもの」
リコは一度足を止めてしゃがみ込み、クロの濡れた頭を撫でた。クロは気持ちよさそうに頭をリコの手に擦り付けた。
「リコの髪は綺麗だよ。お揃いだ。友として誇らしい」
「クロの毛も素敵な色よ。帰ったら洗ってあげる」
「最悪だ」
リコは顔をしかめた友に明るい笑い声を上げた。
辺りはもう真っ暗だ。
一人と一匹が雨の中を歩いている。激しくなった雨に打たれているのに、夜の闇に溶け込みそうな色の彼らは幸せそうだった。
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