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残された時間
病院を出て街を歩いた。午前中だというのに学生や主婦で賑わっている。みんな楽しそうに笑っている。幸せそう……。
でも私は自分を不幸だとは思わない。私が逝っても悲しむ家族もいない。小さな子供でもいたら死ぬなんて、とても出来ない。どんな事をしてでも生きたいと願うのだろう。私には、その必要もないのだから……。
仕事は特別、私でなければならない訳でもなく有能な後輩に後は任せて辞めよう。きっと誰も引き止めもしないから。
残された時間……。どのくらいだろう。
ふと人混みの中で立ち止まって空を見上げた。綺麗なブルーの絵の具で塗りつぶした様な青空。真っ白な雲がふんわり浮かんでる。
せめてどんよりした曇り空なら……。あまりにも綺麗な空が許せなかった。空に罪はないのに……。
視線を下ろした先にコーヒーショップが見えた。
「コーヒーでも飲もう……」 独り言。
注文したコーヒーのカップを受け取り、狭い店内に空いた席を見つけて座った。飲み始めて直ぐに
「相席いいですか?」と声が聞こえた。
「どうぞ」 私は顔も見ずに返事をした。
座ってきたのは、なんだか青白い顔の男。
「あぁ、眠い……」と声が聞こえる。
夜遊びでもしてたの? そんなに眠いのなら、とっとと帰って休めば? 心の中で呟いた。声に出して言う気力もない。今の私は……。
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