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セリザワマコト。同姓同名の老人。その後ろ姿に四年前に亡くなった父を重ねた。
お元気で。そう祈らずにはいられない……。
なぜだか涙が零れた。目の前にクシャクシャの水色のハンカチ。隣りにまだ立っていた医師が差し出してくれた。
「ハンカチくらい持ってますから」
私はセリザワさんに背中を向けて反対方向に歩き出した。エレベーターの下りボタンを押して
「あぁ、すみません。僕もこっちなんで」
一階に降りるまで誰も乗って来ない。
「失礼します」 医師にそう告げて病院を後にした。
きょうも良く晴れた綺麗な青空。そういえば私は晴れ女だった。子供の頃から遠足も運動会も晴天。
もうすぐ桜の季節。あのセリザワさんは今年の桜は見られるんだろうか? 病室の窓からでも……。
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