幸せの到来

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圧力鍋を使うのが怖いと言うお母さんは、牛スジと根菜のどて煮をお手伝いさんに作ってもらった他は、自分で料理したらしい。 毎日お手伝いさんが来ることもなく、食事も普通にこんなのだと言い合っているのを聞くと、普通の家庭と同じ感じかと思う。でもあのベビーベッドが20万円の品で、この家の1階と2階に5台もあると聞くと…お父さんこだわりのベッドに100万円ですか…と気が遠くなる。 竹巳くんは私に 「各々やりたいようにやってるだけで、紗耶ちゃんと僕もやりたいようにしようね。誰に合わせることもないし」 と笑う。 「私も極一般的よ?外商さんも来て、まぁたまにジュエリーか絵でも買っておいたら喜んでもらえるんだけどね。それは代々近本のお付き合いだとして、私はUNI◯LOとか普通に行くもの」 お母さん……U◯IQLOは分かりましたけど…ジュエリーか絵でもって分からない感覚です。 「UNIQL◯にも新生児着があったと思う…行こうかな」 「それはダメよ」 「ダメダメ〜」 「母さん、いいでしょ?僕と紗耶ちゃんが行ってくる」 お腹がいっぱいになったしぃちゃんが椅子から降りて“ダメダメ〜”と笑ってベッドを見に行く。 「ダメよ。新生児の肌着は国産オーガニックコットンよ」 「ちゃんと買ってきた」 「そう、ありがとう」 「「…………」」 お料理に忙しいお母さんがお父さんと外商さんに、出産前に最低限欲しい準備を伝えていたらしい。完璧な連係プレーを前に竹巳くんは 「この人たちに内緒で動こうね」 と私に耳打ちした。
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