不幸の連鎖

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「このあとの精進落としは身内だけでやるから、あなたには帰って頂かないといけない」 ぇ…彼のお父さんの言葉を驚きを持って聞きつつ、だからか…と納得もした。私が“他人”という認識で参列者のご親戚からの視線が痛かったのか。 「あとね、紗耶さん。帰る場所も清鷹のところでは困るのよ」 「……どういうことでしょう…?」 「あら…清鷹の話では、あなたはもっと聡明だと思っていたけれど…」 「ママ、はっきりと言わなきゃわからないんじゃない?他人がいつまでもお兄ちゃんの部屋に住めないのよって」 彼の妹の“他人”“住めない”という言葉が連続パンチのように、私に襲い掛かりクラクラする。でも…いくらクラクラしてもお腹へのパンチは避けないといけない。 「フンッ…ッ…急にお腹に手を当てるなんて…妊婦アピールしたって、あなたはお兄ちゃんと結婚していないんだからヨソの人、他人、部外者なわけ」 「病院でも“ご家族さま”っていう時に、槙田さんはヨソさまだったでしょ?まだ現実が理解できておられない?」 兄を失ったばかりの二人の言葉が、冷たい表情と共に私を突き刺す。 「まあ、そうは言っても紗耶さん。紗耶さんに親兄弟もいないことを知っていながら出て行けとだけ言うつもりはありませんけどね。その子は田川の子ですから」 私がお父さん…田川さんの言葉の意味を知ったのは1時間ほど後のことだった。
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