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そして翌日、アパートの裏側の駐車場にとめてある竹巳くんの車で到着した近本邸は
「これ…全部?」
大きすぎて正面から全ては見えないという豪邸だった。緊張した私はバッグを車に忘れて、両手でお腹を撫でる。
「大丈夫だよ、紗耶ちゃん。みんな普通の人だから」
小さなバッグを持った彼が私の頭を撫でると
「待ってたわよ、いらっしゃい。あら〜あらあら、可愛らしいお嬢さんねぇ。竹巳の母、ヒサエです」
綺麗に髪をアップにしたお義母さんが出迎えてくれた。
「はじめまして…紗耶です」
と頭を下げると、竹巳くんの持つバッグがチラッと見えて
「あ、ごめん…持たせたわけじゃないんですけど…」
と誰に言い訳するのか分からない言葉と共にバッグに手を伸ばす。
「母さん、紗耶ちゃん緊張して車にバッグを置いてただけだから」
「そんなに緊張したらお腹が張るでしょ?中で座って」
すぐに通されるお部屋までにもいくつかの部屋があるようだ。
「竹巳くん…こんなに広いところじゃ…余計に危ないんじゃない?迷子とか…」
「大丈夫よ。どこからでもピッとボタンひとつで人は呼べるわ。ここ、どうぞ」
お義母さんがドアを開けると、そこは応接室でもリビングでもなく
「ここに部屋を用意したわ。2階の竹巳の部屋では良くないでしょ?ここならリビングの隣だし」
ベビーベッドまで置かれた寝室だった。
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