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「お待たせしたかしら〜?しぃ、よいしょ、よいしょ…そっと、そっと…頑張って〜」
竹巳くんが開け放ったままのドアの向こうから、また新たな声が聞こえて
「しょぉーとっ…しょぉーと…やさしくできるよぉ〜♪しゅきぶは…オネエチャン♪」
可愛い声も続く。
「ちょっとちょっとっ、なになに?竹巳が泣かせた?」
さっきの竹巳くんと同じ慌て具合の女性の声で、上のお義姉さんだと確信した。
「違っ…大丈夫なんです。皆さんが優しすぎて……」
「「それならいい(の)」」
声を揃えて、竹巳くんと上のお義姉さんはとても似ているようだ。
「似てるね」
「よく言われる。トモねえと僕は姉弟っぽくて、ユリねえと僕は友達っぽいんだって」
「そうなのよ。トモです。しぃ、ご挨拶」
「………ハロォ…」
英語?驚いたのは私だけで、他のみんなは笑って見守っている。
「車で練習した挨拶を忘れて頭が真っ白で、知ってるHelloで乗り越えようとしたのよ。なかなかできる子よ、しぃ」
私は、ママに頭を撫でられた女の子の前にそっと膝をついてから、同じように声を掛けた。
「ハローしぃちゃん?紗耶です」
「あ…さぁちゃん…さぁちゃんの赤ちゃんにあげる」
グイッと差し出されたのは、ここまでそっと運んでくれた小さなブーケ。
「ありがとう。赤ちゃんが初めてもらったプレゼントだ…嬉しい」
「じゃ…しゅきぶがオネエチャンでいい?」
「えっと…しきぶちゃん?」
「四季舞って書いてしきぶ。みんな“しぃ”って呼ぶけど」
ママの声にコクコクと頷くしぃちゃんはちょっと得意げで可愛い。
「しぃちゃんがお姉ちゃんになってくれたら赤ちゃんも私も嬉しいな…とっても」
「じゃ、なってあげるねぇ」
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