幸せの到来

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義理でない家族だからと言ってもらい、お父さん、お母さん、トモさん、ユリカさんと呼ぶことになった。 トモさんが義実家の店から大きな祝い鯛を持ってきてくれたのを真ん中に、夕食をいただくことになる。 「こんな大きな鯛が泳いでるんだ…」 「あははっ…サヤさん、しぃと同じこと言ってる」 「紗耶ちゃんは施設にいた頃も小さい子に優しかったからね」 グラスを運んでいる竹巳くんの言葉は的外れな感じがしたけれど、それでも施設の話を普通にしていいのは安心出来る空間だと思えた。 「カガタケくんも優しかったよね…あ、施設で竹巳くんはカガタケくんって呼ばれてて…」 「施設に行った時に、そう呼ばれているのを聞いたわ。懐かしい」 「そうだね。竹巳のそれまでを聞いたのは施設の大人の方たちからだけだ。紗耶さんが教えてくれるのも嬉しいことだね。優しい以外には、どんな子か覚えてるかい?」 お母さんもお父さんもダイニングで動きながら私に聞く。 「カガタケくんは、いつも私にブランコを代わってくれたんです。代わってあげる、とか、交代してあげる、とか、そんな言い方は絶対にしないで…交代しよ、交代だよって…今でも“◯◯をしてあげる”って言い方は絶対にしない」 「あははっ…しぃは“オネエチャンになってあげる”ってキッパリ言ってたわ」 お手伝いさんのいない家族だけの広いダイニングで、トモさんの言葉に皆が笑うと 「しゅきぶ、しゅパゲッチーいる。おしゃかないらない」 と椅子の上に立ったしぃちゃんが鯛の口に小さな指を突っ込んでは、一人でキャッキャと指を引いてる。食べないけど気になるよね。 「それ、動くよ?」 竹巳くんがしぃちゃんに言うと、彼女はオムツの可愛いお尻をへっぴり腰にして指の無事を確かめている。可愛い…すごく真剣に見てるよね。
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