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「あ、今、おめめが動いたみたい」
ユリカさんの言葉にギョっとして鯛を睨みつけるしぃちゃんはますます可愛い。
「しぃちゃん、強いね…」
泣きそうになるのではなく、ママに助けを求めるのでもなく、すごく強い子だと思う。
「オネエチャンだもん」
「そうだね。2歳だもんね。座るよ」
誰も鯛の冗談を説明しないままでいいのかと、キョロキョロする私に
「全部大人が教えないと、って思わなくても大丈夫」
「危険な事だけ教えれば、あとはそのうち分かるというくらいで大丈夫」
「という感じで僕たちは育てられたってこと」
お父さん、お母さん、竹巳くんが順番に声を掛けてくれる。そしてトモさんも
「全部教えてたら、寝る間がないわよ」
と言い、ユリカさんは
「私も危険と、あとは使って欲しくない言葉にだけは気をつけようねって旦那と決めてる」
と言って、まだ寝ているマリカちゃんを見た。
「ここには先生も先輩もたくさんだ…」
「うるさいなぁ、って聞き流していいからね。みんなよく喋るから何度でも聞こえてくる」
「竹巳のアドバイスもどうかと思うが…これを二人に」
座った私と竹巳くんに、お父さんが何かを差し出す。
「紗耶ちゃん、開けて」
「…うん」
しぃちゃんのお皿にナポリタンを取るトモさん以外、しぃちゃんも私の手元を見つめる中、包装紙を取り、出てきた箱を開けると、中にはペアの腕時計…
「父さん、ありがとう」
「結婚の祝いだと思って受け取ってくれたらいい。紗耶さん、これから竹巳をよろしくお願いします」
「……ありがとうございます…私の方…こそ………子どもも…竹巳くんの子じゃな…」
「僕の子どもだよ、紗耶ちゃん。そこは間違えたらダメ」
「そうね。血縁に関係なく、いい家族、いい親子になれることは私たちが自信を持ってお手本になれると思うけれど?」
竹巳くんとお母さんの言葉に涙が堪えられなくなると、しぃちゃんのコソコソとした声が聞こえた。
「…ママ…さぁちゃん……おなかいたい?」
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