不幸の連鎖

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不幸の連鎖

酔いそう…かも… 私は線香と焼香の香りが充満する室内で、少し逃げ場を探すように周りを見渡した。 はぁ…酔いそうなんじゃなくって、この視線に耐えられないんだわ…しっかりしなくっちゃ…ね、清鷹。 来年、私、槙田紗耶(まきたさや)田川清鷹(たがわきよたか)は結婚する…予定だった。 それなのに…彼は今にも“紗耶、おいで”と言いそうな微笑みを浮かべて、黒白の弔用リボンを髪のあたりに掛けている。 もう涙も出ない。これ以上の水分放出はお腹の赤ちゃんに危険だと本能的に分かるから。 「紗耶さん、ちょっと」 清鷹のお母さんに手招きされて、どなたかにご挨拶かと思い足を動かすと、彼女も歩き始めた。他の家族も一緒に部屋を移るようなのでゆっくりと後に続く。 告別式の行われたすぐ隣の控室に入った途端、ずらりと私に向かって横一列に並んだのは、清鷹の両親と弟と妹の4人。 「まだまだこの後やることが多くてね…」 そりゃそうですよね… 酷い頭痛に繰り返し襲われた清鷹が病院で診察を受けた結果、かなりの大きさの脳腫瘍が見つかった。当然手術は必要だが、腫瘍の場所と大きさから危険な手術であることも聞かされていた。 それでも…誰が手術開始30分での彼の死を想像していただろう… 私は妊娠8ヶ月で夫になるはずだった彼を失い、お腹の子はこの世に生まれる前に父親を失った。
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