異世界に喫茶店

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異世界に喫茶店

『いらっしゃいませ』  それは、今から5年ほど前のことである。  清水(しみず)和寛(かずひろ)という人物は都会の片隅で、喫茶店を営んでいた。  年齢は40代半ば。  短い顎髭がよく似合う“かっこいい店主“である。  そこに白と黒の服と蝶ネクタイが調和して、良い雰囲気を漂わせていた。  店はというと、古民家に近い内装と雰囲気ではあるものの、ガラス窓からの日差しが強く差し込んで店内はかなり明るい。客足はまちまちで、立地条件もあってか"知る人ぞ知る名店"ということで、少しずつ人気を伸ばしていた。  父親の代から受け継いだ喫茶店、今日もその店主として仕事をする。  だが、そんな彼の身に危険が迫った――。 『ふぅ……、今日は客が多かったな』  夜になり、店としては閉店。『今日は終わりにするか』とバイトの女の子に告げ、その子を見送った後が本格的に店じまい。  テーブルとイスを整えながら、まずは店の外に並べている看板を片付ける。  これがなかなかの労働作業だ。何故バイトの子にやらせないかというのは、力仕事だからというのもあるが、昔から自分だけでやっていたということもあるのだろう。  ガラスをガタガタと揺らしながら、肘でドアノブを下げ、肩でドアを押し開ける。これを何度か繰り返して、看板を一つ一つ店内へ運んでいく。  最後はチャリチャリッと腰に付けていた鍵を取り出して、『OPEN』と書かれていた部分を自分へ向けて閉店を告げる。  最後に鍵をかければ…………。 『なっ!!?』  ドアに鍵を差し込んだ時、お店の外から急に眩しい光が差し込んできて、途端にガラガラガラッ!!という物を破壊する音が迫ってきた。 『うあ゛あぁぁぁぁぁーーーー!!!!!』  割れる窓ガラスと睨むふたつの目。  直後、バーーン!という大きな衝撃音が響く。 『おおい!突っ込んだぞ!!』 『救急車と警察に連絡だ!!』 『巻き込まれた人がいるぞ!!』  突然、彼は大事故に巻き込まれてしまった……。
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