7人が本棚に入れています
本棚に追加
「確かめるしかない」
次の日、私はまた王城を抜け出して冒険者として街に出た。
また依頼を受けて戦い、今回も強敵であったために苦戦、少し怪我をしてしまった。
「さすが、誰も受けたがらない依頼なだけあるわ。強敵しかいない」
そうして夕方になった頃、私は帰り道で喫茶店へと立ち寄った。
『いらっしゃい』
「また来たわ」
『ありがとうございます』
メニューを渡されるが、今度は中身を開くことなく、私は言った。
「ブラックコーヒーをお願い。あとおすすめのぱふぇを」
『ミルクとさとうはお付けしますか?』
「大丈夫。今回はなしでいい」
『かしこまりました』
なんて私は負けず嫌いなのか。
どうしてもあのこーひーを克服したいという気持ちが溢れてきて、ミルクを付けるのを拒否してしまった。
『お待たせしました』
しばらくすると、コーヒーが目の前に置かれる。
いつ見ても素晴らしい器なのだが、中身は背筋が寒くなりそうな禍々しいものだ。
「いただきます」
恐る恐る一口。
口の中に広がるのは独特な苦味と風味。
どうしてもその苦味に顔が歪み、なかなか喉を通ってくれない。
「…………っ」
覚悟を決めたようにして飲み込んでみる。
美味しいとは言えなかった。
さらに、私は気付いてしまった。
「なんで!?」
驚いてしまい、席を立つ。
店主がこちらを見つめて、不安な表情を浮かべている。
見ればそこにあるはずの傷が、嘘かのようになくなっているではないか。
「ついさっきまで……あったはずなのに……」
店内に入る前はあったはずだ。それから口にしたのは回復薬などではなく紛れもない"こーひー"だ。
「これって……まさか……」
なんと、これには回復効果があるようだ。
身体が軽い感覚も間違いではない。
「とんでもないことだ」
最初のコメントを投稿しよう!