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エピローグ
「コーヒーをお願い」
それから私は毎日のように喫茶店ラルムへと通った。
何度も飲んでいるうちにコーヒーの美味しさがわかるようになってきて、癖になっていた。
そんな、ある日のこと。
『大丈夫ですか?顔色が悪いようですが』
店主におかしなことを言われた。
自分の中では普通である……はずだったのだが、
「うっ……」
席を立ち上がると、意識が薄れてしまい、私はそこで倒れてしまった。
『大丈夫ですか!?』
「えぇ……大丈夫」
気がつけば、ベッドの上にいた。
そこは喫茶店の二階にある部屋らしく、店主が不安な表情でこちらを見ていた。
「……最近、夜になると全然眠れる気がしなくて。むしろ身体が軽くて、疲れがない」
『寝れていないのですね。恐らく……コーヒーでしょう』
「そうなの?」
『こちらの世界にある原料にカフェインがあるのかはわかりませんが、もしかしたら含まれているのかもしれませんね。コーヒーを飲むと通常、眠れなくなってしまうのですよ』
最近は毎日のように訪れ、コーヒーを飲んでいた。身体が軽くて治癒効果があり、全然眠気など感じなかったが、それが副作用だった。
「だから……」
『最近は二杯や三杯飲まれるので心配はしていましたが……。飲み過ぎはいけませんよ。ほどほどに』
「気をつけるわ……」
何事もやり過ぎは毒だと、私は感じた。
「ところで、こっちの世界での原料って言ったよね。どこで手に入れてるの?」
『ここから少し離れた。ビシャールってところで、原料になる豆が売っているんですよ』
「えっ……今なんて?」
『ビシャール……ですが?』
私はその言葉を疑ってしまった。
なぜなら……、
「そこって、魔女達が住む禁忌の街……よ……」
"コーヒー"
それは本当に、魔女が生み出したスープなのかもしれない。
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