孤高のホストαと天使Ω 朝のひととき

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孤高のホストαと天使Ω 朝のひととき

 嶺二が目を覚ますと、もう朝になっていた。  寝返りを打とうとしたが、右腕が動かない。 「?」  横を見ると、白亜が嶺二の腕に抱きつくようにして眠っていた。  布団がずり落ちていたので、肩までかけ直してやる。 「んぅ~」  白亜がモゾモゾと動くが、起きる様子はない。  嶺二は、白亜の髪をそっと撫でた。  ふわふわと揺れる美しい金髪は、染めているのではなく地毛だ。ハーフである白亜は、瞳も綺麗な水色で、愛らしい顔立ちをしている。  あどけなく、無垢で、穢れのない天使。  すやすやと眠る姿は、幼子のようで可愛らしかった。 「だいぶ、肉がついてきたな」  白亜の頬を軽くつつくと、プニプニして柔らかい。  子供のように見えるが、白亜は嶺二の八つ年下で、もう二十歳だ。  しかし、嶺二に出会う前は虐待を受けて育ったので、成人した今でも体が小さい。  背の高い嶺二が白亜を抱きしめると、腕の中にすっぽり収まって、ちょうど胸のあたりに白亜の顔がくる。  白亜の、小柄で愛らしい見た目は、嶺二の庇護欲をかき立てた。  ただでさえ、番のオメガというだけで愛おしいのに、純粋無垢な天使は、もはや嶺二の守るべき宝もの。「孤高のアルファ」と呼ばれ、ずっと独りで生きてきた嶺二に、初めて愛と安らぎを教えてくれた存在だ。 「んぅ……レージ、くん?」  頬をつつきすぎたせいか、白亜が目を覚ましてしまった。 「まだ寝てていいぞ」  嶺二が頭を撫でて寝かせようとしたが、白亜はパチパチと瞬きする。  隣の嶺二を見上げて、ふにゃりと笑った。 「レージくん」  嶺二の胸に顔をすり寄せてくる。  甘えるしぐさに、頬が緩む。  無邪気に懐き、慕ってくる姿は、嶺二の心を温かくした。 「レージくん、すきっ」 「ああ」  白亜は毎日、飽きもせずに「好き」と伝えてくる。心の幼い白亜にとって、嶺二は恋人であり、家族であり、絶対的な存在だ。  それに白亜は、嶺二に出会うまで、発情(ヒート)もしたことがなかった。  そのため、嶺二が一から性教育を施す羽目になったのだが、無垢な白亜を前にすると、イケナイことをしている気分になる。  内心でどぎまぎしながら教えていったが……さすがオメガというべきか、白亜は驚くほど飲み込みが早かった。  今では、嶺二が欲しいと思えば、すぐに誘惑してくる。  フェロモンを放ち、嶺二を甘い香りで包んで、惑わせるのだ。 「ぁっ、レージくんっ」  白亜が甘い声を漏らして、体をもじもじさせる。  同時に、白亜から薫る甘い香りが、濃くなった。 「白亜?」  呼びかけると、白亜が顔を上げた。  水色の瞳が、ウルウルと揺れる。 「レージくんっ」  甘えた声に、心臓がドキドキと早鐘を打つ。  嶺二は無意識のうちに、白亜を抱きしめた。 「レージくん」  おでこに、ちゅっとキスをすると、白亜が嬉しそうに笑う。  けれど、だんだんとフェロモンが強くなって、甘い香りに包まれる。  朝からするなんて、あまりにもはしたない気がする。  だが、嶺二は白亜の視線に抗えない。  愛する白亜が「欲しい」とねだれば、その望みを叶えるしかないのだ。 「白亜」  嶺二は愛しい白亜を抱きしめて、覚悟を決めたように、唇にキスを落とした。 (終)  
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