黒い企業

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 また朝が来た。煩く鳴り響くスマホのアラームを止めると、のそりと起き上がる。現在午前四時。いつもの起床時間だ。空はまだ真っ暗であり、およそ人が活動していい時間帯じゃあない。凍える程寒い中、疲れ切った身体にムチを打って顔を洗い、くたくたのユニフォームに着替える。朝飯を食ってる余力はないので、珈琲だけをがぶ飲みして、早々に車へと乗り込む。愛車はオンボロの中古車だ。こんなものでも僕の貴重な財産。かかりにくいエンジンに喝を入れて、フロントガラスから結露を取り除いてから発車させた。  煙草に火をつけて、煙をくゆらす。これがないと、いきていけないだろうな、といつも思う。酒は飲めない。翌日に支障が出るからだ。よって友達は喫煙だけだ。  店舗につくと、シフト前のサービス残業だが早々に開店準備を始める。  手早く機器に電源を入れた後は、前日の売上等の確認作業に入る。大抵は問題ないが、万一があるとここで大問題となる大切な作業だ。慎重に慎重を重ねて目を凝らす。  よし、今日は特に問題ない。  この後は機械が立ち上がっているのを視認してから店舗周辺の様子をざっとチェックする。ここで異変がなければ初手の開店作業は終了だ。  ルーティンワークを終えた後はアルバイトの従業員が来るのを待つ。彼等彼女等は来店すると機器の清掃や客に出す商品のチェックをする。そこでも問題が無ければ、本格的に開店となる。  開店する瞬間は未だに緊張する。また忙しい一日が始まるのだ。
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